『ラス為』最悪の女王・プライドを演じるファイルーズあいさんにインタビュー 「子供のころから好きだった」悪役の魅力とは

TVアニメ

7月6日(木)よりTOKYO MX、MBS、BS11ほかにて放送開始の『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民のために尽くします。(ラス為)』。
本作は、一迅社アイリスNEOにて刊行中、シリーズ累計発行部数130万部を突破(電子書籍含む)する天壱氏による同名ノベルシリーズが原作。

乙女ゲーム「君と一筋の光を」の国と民を苦しめる最悪の女王プライドが、思い出してしまった前世の記憶を頼りに、これから起こる悲劇を回避し登場人物みんなが幸せになれる世界を目指すため、ゲーム内のストーリーを改変して国のために民のために全力を尽くしていくという物語が展開する。

今回は、本作で主人公のプライドを演じるファイルーズあいさんにインタビューを実施した。作中では悪役の一面も見せるプライドをどのように演じたのか。そして悪役が持つ魅力とは。さまざまな質問をぶつけてきた。

魅力的に映る”悪役”とは

――本日はよろしくお願いします。まず、原作を読んだ際の第一印象を教えてください。

世間で悪役令嬢が人気を博しているというのは、なんとなく知ってはいたんです。私自身、乙女ゲームをプレイしたことはありますが、悪役令嬢という存在は、かなり昔の作品だったらギリいたかな、くらいの感覚だったんです。
いてもスチルがなかったり、声だけだったりということが多い存在だったんですよね。あくまで主人公の攻略対象というより、踏み台というか(笑)。

そんな立ち位置のキャラにフォーカスを当てて、かつ主人公として描くことで、こんなにも魅力の詰まった物語になるんだなという新鮮な発見がありましたね。

――具体的に、本作ではどんな「新鮮な発見」があったのでしょう。

もともとプライドの元の人生、前世だと乙女ゲームをプレイしていたごく普通の学生が、何の知識もない中で自分のできることは何だろうと模索することから始まります。

最初から強いわけじゃなくて、ちゃんと自分で努力している姿を見ることで、自分もプライドみたいに強くなりたい、普通の女の子でもこんな風にのし上がれるんだと、努力するためのやる気をもらえると思いました。
悪役令嬢であっても、自分で運命を作っていけるというのは、この作品ならではだと思います。

――自身が演じるプライドに関して、どんな印象を持ちましたか?

もし自分が転生して、大好きな乙女ゲームの世界に行ったとしたら、絶対に全員からモテるために、全員の好感度MAXを目指すと思うんですよ。
でもプライドはそうではなくて、自分の立場をきちんと理解して、どうしたら妹や家族や愛する国民たちが不幸にならないかを模索して、自分なりに努力をしていくんです。

八方美人なわけではなく、本当にその人のためを思う心からの慈愛で接していくところ。人のために行動できる強さを持っているところがプライドの魅力です。

――ゲーム内のキャラという設定ではあるものの、人間っぽさもあるというか。

そうですね。特に好きなのが、ティアラと初めて会ったときに、心の中で「私、嫉妬してる」と言ってしまうんです。それを自覚しているからこそ、私はプライドがすごく好きになりました。
何でもできる最強のキャラだと、確かにカリスマ性はあるように見えますけど、共感できない部分も出てくるんですよね。ただ、さりげない一言があることによって、プライドってどんなに強くても、年相応の女の子なんだと実感できるんです。すごく血の通った子ですね。

――演技でプライドの魅力を引き出すために、どんなところに注力しましたか?

プライドの一番大きな魅力って、外道プライドと記憶を思い出した通常プライドのギャップだと思うんです。差があればあるほど面白いキャラクターになると思っていたので、そこは意識したところです。
ただ、もちろん差は大きくしたいんですが、あまりにもかけ離れすぎると、キャラがブレてしまいます。なので、同じ人の声帯から出てるとは思えないって言われないように、あくまでプライドという女性の声帯から出てる声幅の中で変化をつけるようにしました。

記憶を取り戻した方のプライドは、性格がすごく明るいだけじゃなく、思いやりもあって素敵な女性です。しかし優しいだけではなく、はっきりと物を言える人物でもあります。
悪役令嬢という、ある意味宿命的な人生もあって、声の圧も備わってると思うんです。品を保ったまま芯を通し、けれど優しさ、慈愛を持って…すべてを兼ね備えた演技はすごく難しかったですね。

――外道プライドの演技はいかがでしたか?

外道プライドは逆に、演じやすくて仕方ない(笑)。私が二次元で好きになるキャラの傾向は、外道プライドみたいな性格の悪いキャラクターなんです。ずっと小さいころから、「悪役を演じたい」と思っていたくらいです。
だけどこれまで私が演じてきたキャラは、明るくて正義感ある子が多くて。だからこそ、プライドに出会って、どっちも演じられるのは本当に嬉しかったし、二面性を同時に演じるのは勉強にもなります。

――「悪役」という存在には、どんな魅力を感じるのでしょう。

子供のころから主人公ではなく、敵を応援しちゃう子だったんです(笑)。自分でも上手く形容できないですけど…敵キャラって、だいたい死んじゃうことが多いじゃないですか。そこがむしろ魅力的というか。ちゃんと最後まで見届けられるという安心感を持って推せるのが、悪役だと思うんです。
死んでしまったらもちろん悲しいですよ? だけど、最後までちゃんと見届けられるのは嬉しいことでもあるんです。

――敵を好きになる、最初のきっかけはどのようなことだったんでしょう?

とあるキャラクターの存在を中学生のときに知ったことがきっかけなんですけど、衝撃的だったのを覚えています。
特に不安を煽る喋り方。文節の途中で急に声を低くすると怖く聞こえるんだとか、威圧的に聞こえるんだとか、語尾を半音上げると不快な喋り方になるんだとか、あらゆることを教えてもらいました。
それと同時に、時折人間臭い一面も出してくるんですよね。そこで本性が分かるというか。良い子すぎる主人公ではなく、悪役を魅力的に感じるのは、そんな人間臭さもあるとおもいます。

プライドの人間らしい部分も魅力

――監督をはじめ、スタッフから何かディレクションを受けたことはありましたか?

みんなの前に立っているときのプライドは王女様ということもあって、語尾を低めにして、威厳を持たせているんです。
一方でモノローグは、現代の記憶を持った素の状態のプライドが喋っているわけで、現代人っぽさというか、ある意味の若者みたいな砕けた部分を表現できるように、とは言われました。
モノローグが続くと思ったら会話が始まったり、逆に喋っていたと思ったら急にモノローグになったりもするので、それぞれの入れ替えがすごく難しかったですね。

――プライドたちは8歳のころから始まり、徐々に成長していきます。ファイルーズさんは幼さや成長を演技の中で意識しましたか?

プライドは中身がしっかりしている子なので、喋り方や考え方で幼さを出すのは難しいんです。その代わり、声のトーンで幼さを表現できるように意識しました。
でもやっぱり、口が回らないとか、舌足らずな印象にすると、あまりプライドの持つカリスマ性が薄くなってしまいます。
ちゃんと伝えたいことははっきりと言うけど、ちょっと声が高いみたいに、決して幼稚にならないよう注意しました。

――実際に出演してみて、作中の印象的なシーンとかってありましたか?

ジルベールが抱えているもの、過去が明らかになっていくところは、原作を読んでいても、心がじんわりとする気持ちになりました。
最初はジルベールもトゲトゲ言ってくる、嫌なやつという立ち位置ですけど、彼の心境の変化が分かったときは胸にくるものがありました。

――ジルベールのお話もあったところで、プライド以外のキャラクターだと誰が魅力的に見えましたか?

大前提として、一番のお気に入りはもっと先にいるんですけど…すでに発表されているキャラクターの中ではロデリックですね。もう、覚悟が違うんですよ。
実際に戦場に行っている人の考え方というか、割り切ってシビアなところもあって、それでいて情に熱いところもあって。相手が王女であろうと、毅然と物申す姿は力強くて、かっこいいなと思いました。

――キャラクターデザインについてはどのように感じましたか?

私もまだまだ、短い声優人生ですけど、アフレコ時点でこんなにアニメが完成されていることがなかったくらいなんです。だから、美しい映像を見ながらアフレコさせていただいたのが、ビジュアルに関する一番の印象です(笑)。
キービジュアルや立ち絵を見ても、原作通りの仕上がり、むしろさらに洗練されていると感じました。

――映像が完成していると、逆に演じるのが難しいケースもあるのでは?

あります。むしろ完成していないと、喋り出しのタイミングがある程度アバウトでも大丈夫だったりもするんですけど、映像が完成していると、ぴったり合わせないといけないんです。
アフレコではアニメーターさんやスタッフの皆さんが作り上げてくださった世界観を壊さないように、映像からはみ出さず、それでいて個性もしっかり出して…という足し算引き算が難しかったですね。

――それでは最後に、本作を楽しみにしているファンの方へのメッセージをいただければと思います。

悪役令嬢が主人公という、人気を博しているジャンルですが、プライドが王女として国を統治していく過程、その中で悩み苦しんでいる姿は、他の作品にはない魅力だと思います。
それにプライドの人間らしい部分が表れているので、きっと皆さんもパラレルのファンタジーではなく、1人の人間としてのプライドに共感できると思います。

同時に、プライドの女性としての力強さも感じられます。自分も強くなろうと思える作品なので、ぜひプライドからたくさんのエネルギーを感じてください。

放送情報

2023年7月6日(木)よりTOKYO MX、MBS、BS11ほかにて放送開始
TOKYO MX :7月6日(木)より毎週木曜24時00分〜
MBS :7月7日(金)より毎週金曜26時55分〜
BS11 :7月6日(金)より毎週木曜24時00分〜

【配信情報】
ABEMA、U-NEXT、アニメ放題にて先行配信
dアニメストアほか各配信サイトでも順次配信

公式サイト 公式Twitter
©天壱・一迅社/ラス為製作委員会2023